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 ハルコは、肩を震わせていた。

 ソファに身をよじるように片手をついて、顔を逸らして隠しているけれども―― ぜってー、笑ってやがる!

 カイトをからかっているような気がしてしょうがない。

 ハルコだけではなく、ソウマ夫婦の存在自体が、彼にとっては悪魔にさえ思えた。

 しかし、いま気にしなければならないのは、その悪魔の申し子のことではなく、『すんな!』と言ってしまったことへの後処理である。

 ちらっとメイの方を見ると、遠慮気味にうつむいて。

 余計なことを考えていなければいいのだが。

 ハルコの存在のおかげで、いまフォローができないのだ。

 できたとしても、どんな言葉が使えるのやら。

 信用ならない口である。

「あの、ホントにカップは結構です…他にもいろいろありますし」

 笑いすぎて涙でも出たのか。

 目元を押さえながら顔を前に向けるハルコに、メイは困った笑顔を浮かべた。

 カイトとの関係を心配しているかのようだ。

「そうね…そうしておくわ」

 その笑顔が、気に入らない。

 カイトは、更にぶすーっと顔を歪めてしまった。