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自分が買って来た米であろうとも、昨日までの米の味との違いを述べよ、という問題が出たら、カイトはきっと赤点だろう。
結局、どんな米も彼にとっては似たようなものだった。
強いて言うなら、誰が用意したものか、ということか。
「おいしいですね…」
にこにこ。
普通なら、彼女は自分の作った食事をわざわざ言葉で絶賛したりはしなかった。
暗に、彼の買ってきた米についてのお礼の代わりなのだろう。
いちいち、蒸し返さないで欲しかったが。
むすっとしたまま食事を済ませ、カイトが立ち上がると、彼女が食事途中でもやってくる。
白い指がネクタイを締めて、『いってらっしゃい』と言う。
それから逃げるように、カイトはダイニングを出ようとしたのだが、ふと足を止めた。
頭の中を、ぐるぐると巡っている言葉を何とか捕まえようとしたのである。
「どうかしました?」
メイが、不思議そうな声をかけてきて、その声で全部がすっ飛んでしまいそうになった。
ぐっと、それをこらえて。
ついでに、プライドというヤツにさるぐつわを噛まして、倉庫の中にたたき込んで。
そうして、ようやく言った。
「ごっそさん…」
ぼそっと。
しかし、彼女の方を振り返れなかった。
どんな表情をしているのか、確かめたくもなかったのだ。
そんなことをしようものなら、さるぐつわを食いちぎって、猛犬のように吠え出すヤツがいるのを知っているからである。
そのまま、大股で肩をいからせてカイトはダイニングを出た。
でも、『行ってきます』――は、まだ言えなかった。
自分が買って来た米であろうとも、昨日までの米の味との違いを述べよ、という問題が出たら、カイトはきっと赤点だろう。
結局、どんな米も彼にとっては似たようなものだった。
強いて言うなら、誰が用意したものか、ということか。
「おいしいですね…」
にこにこ。
普通なら、彼女は自分の作った食事をわざわざ言葉で絶賛したりはしなかった。
暗に、彼の買ってきた米についてのお礼の代わりなのだろう。
いちいち、蒸し返さないで欲しかったが。
むすっとしたまま食事を済ませ、カイトが立ち上がると、彼女が食事途中でもやってくる。
白い指がネクタイを締めて、『いってらっしゃい』と言う。
それから逃げるように、カイトはダイニングを出ようとしたのだが、ふと足を止めた。
頭の中を、ぐるぐると巡っている言葉を何とか捕まえようとしたのである。
「どうかしました?」
メイが、不思議そうな声をかけてきて、その声で全部がすっ飛んでしまいそうになった。
ぐっと、それをこらえて。
ついでに、プライドというヤツにさるぐつわを噛まして、倉庫の中にたたき込んで。
そうして、ようやく言った。
「ごっそさん…」
ぼそっと。
しかし、彼女の方を振り返れなかった。
どんな表情をしているのか、確かめたくもなかったのだ。
そんなことをしようものなら、さるぐつわを食いちぎって、猛犬のように吠え出すヤツがいるのを知っているからである。
そのまま、大股で肩をいからせてカイトはダイニングを出た。
でも、『行ってきます』――は、まだ言えなかった。