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 昨夜はさんざんだった。

 起きる少し前の意識の中で、カイトはそんなことを思った。

 本当は、自力で目覚められるくらいの浅いところにいたのだが、彼は自分で陸に上がってこようとはしなかった。

「おはようございます…起きてください」

 その浅瀬で立っていると、そんな声が聞こえてくる。

 陸に上がる時がやってきたのだ。

 うー。

 うなりながら身体を起こす。

 彼を水棲動物から進化させた生き物は、スカートの裾を翻らせるところだった。

「今日の朝は、なめことお豆腐のおみそ汁ですよ」

 そう言えば、カイトが喜ぶとでも思っているのだろうか。
 彼が、みそ汁に多大な興味とか関心を抱いているとでも。

 ちゃんとベッドから起き上がった時は、ドアが閉ざされる時でもあって、彼女―― メイの姿は消えてなくなっていた。

 スカートの裾だけでは、その人間と会ったとは言えないだろう。

 会いたければ、用意を済ませてダイニングに行かなければならない。

 寝癖のついた頭をかいて、彼はベッドから降り立った。

 他人が絡むと、ムカつくことだらけだ。

 カイトは電動ひげ剃りを当てながら、鏡の中の自分の仏頂面を見た。

 昨日の件を見るまでもなく、いままで他人が絡むとロクなことがなかった。

 シュウは元より、ソウマもアオイも、全部邪魔をしてくれるのだ。

 彼女と二人でいる時は、問題がないワケではないのだが、最近は穏やかな空気を共有できつつある。

 お互いに何も言うことはないけれども、それでも一緒にいられるだけで心地よいのだ。

 それは、カイトの男な部分とは決して相容れるものではない。

 けれども、その相容れない男とやらを、レーダーも通さないようなステルス製の箱の中にでも突っ込んでおけば、何とかなりそうだった。

 なのに、だ。

 邪魔者が入る度に、その誰かとやらがステルスに足をかけるのである。