「…っ!」

 驚いて、ベッドから飛び起きる。

 自分の部屋の、自分のベッドの上だ。

 そこには、自分以外誰もいない。

 しん、と冷たい空気も、暗い室内も。

 振り返って見た枕元の時計は、新聞配達員が働き出すような時間を告げていて、まだ起きる時間ではなかった。

「あ…」

 呟く。

 信じられない記憶が、いや、それは夢だった。

 寝ている時につい見てしまう、他愛ない、悪戯な夢だ。
 しかし、メイの思い通りには、決してなってくれない夢だったのである。

 何て、夢。

 身体が熱い。

 両手で顔を覆った。顔も熱かった。

 何という夢を見てしまったのか。

 あれでは、まるでカイトと自分が結ばれているかのようだった。

 そうして、とんでもないところまで夢は突っ走っていったのだ。

 思えば、かなり曖昧なところがあったように思える。

 どこかのドラマや映画で見た構図を、脅迫状の文面のように切り取って貼り合わせたような画像の連続。

 けれども、あの夢を見ている時は、間違いなくその場所に本当にいる気分だった。

 寝坊する夢などは、前にも見たことがある。

 そういう困った夢に限って、リアリティがあって、本当に夢の中でも困るのだ。