バターン!

 カイトは、玄関の目の前にバイクを止めるなり、そのドアを力一杯開けた。

 軟弱住宅のドアなら、根本からイカレそうな勢いで。

 びくっ、と足を止める。

 メイがいたのだ。

 すぐそこに立っていて、彼の存在を確認するや目を細めて。

 それ以前に、目が―― 真っ赤だった。泣き腫らしていたのだ。

「おか…なさい」

 慌ててその顔を隠すように下を向いて。
 メイは、絞り出すような小さな声で言った。

 刺さる。

「よかった…」

 刺さる。

「もう……かと」

 全身が。

 針山になった気分だった。

 あの小さく細い針が、身体全体に突き刺さる。

 まるでカイト自体が磁石であるかのように吸い寄せられてきて、ヒュンっと。

 言葉も出なかった。

 その場に立ちつくすしかなかった。

 家を飛び出したのが昼過ぎ。

 それからいままで、何時間もカイトの帰りを待っていたのではないかと、不安な思いをしていたのではないかという想像が、彼をハリネズミにするのだ。

 ただし―― とがった針の先は、すべて彼の方を向いて刺さっていたけれども。

「す、すみません…ご飯にしましょう」

 ゴシゴシと一生懸命顔を拭いて、メイは顔を上げた。

 そうして、笑顔を作りながら言うのだ。

 心を切り替えるかのように、声音まで変えて。