「おはよ…ええっと、ご飯ですよね! すぐ持ってきますから!」

 そんな彼に気づかずに、メイはぴゅーんと調理場の方へ、スカートの裾を翻してしまった。

 笑顔でカイトを撃ち抜いた責任など、ちっとも取らなかったのである。

 ドアのところで、彼は頭を押さえた。

 あの笑顔は、最初はドーンという衝撃が来る。


 その後、一気に身体中に染み渡るのだ。

「爆発物取り扱い注意」の札を、彼女にも貼るべきだった。

 カイトには、「火気厳禁」の札がお似合いか。

 衝撃をようやく拭い去って席につく。

 既にいろいろなものが並べられているのは、見なくても分かっていた。

 調理場の方から、メイがお盆を持ってくる。

「ダイコンと油揚げとネギです」

 にこにこにこにこ。

 嬉しくてしょうがなさそうな、上の方に高く上がっていく声と、くだらない内容。

 軽やかな足取りで、彼女はカイトに近付いてきた。

 目の前に椀を置く。

 味噌の色が、水の中でうねっていた。

 それから炊き立てらしいご飯も、ジャーからよそわれる。

 にこにこにこ。

 すぐ側に立っているメイを見上げると、はちきれんばかりの笑顔だった。

 それをじっと見ていることが出来ずに、ぱっと顔をそらす。

 そうして言った。

「何時に起きて用意したんだ?」――と。

 そのセリフに、彼女の空気が変わったのが分かった。

 慌てるような気配が、はっきりとカイトにまで伝わってくるのだ。

「あ、え…その……そんなに早くは起きていません…料理だって、手のかかるものは作っていません!」

 メイは、最初もつれるようだった唇を、途中から勢いに任せて一気にしゃべり切った。

 しかし、ウソだとすぐに分かる。

 カイトが、料理について疎いと思っているのか、そう言いくるめようとしているつもりなのだろう。