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 リリリリリン。

 思ったより勢いのない目覚ましの音が、頭の上で響く。

 その音に、メイは慣れていなかった。

 昨日買ったばかりの目覚まし時計だ。

 それまでは、この客間には壁掛けの時計が一つあるだけだった。

 元々規則正しい生活をしていたので、身体が覚えている感覚で朝寝坊をせずに済んではいたが、さすがにこれからもずっと大丈夫な自信はなかった。

 寝る時にそんな不安がつきまとっていたせいで、毎夜緊張感ある睡眠時間になっていたのだ。

 何度寝坊したと思って、夜中に飛び起きたことか。

 だから、昨日ハルコと服を買いに出た時に、ちっちゃくて安い目覚まし時計を一つ買ったのだった。

 ぱち。

 熟睡中ならもしかしたら聞こえないのではないかと思う目覚ましでも、メイには十分だった。

 少なくとも、昨日までよりはぐっすり眠れたからである。

 彼女にとっては、目覚まし時計は敵ではなかった。

 それどころか、大事な協力者なのだ。

 止め方が分からずに少しまごついたが、無事目覚ましのベルを切る。

 ベッドから下りて。

 しん、と冷えた空気の中で、彼女は準備を始めた。

 顔を洗って歯を磨いて、大慌てで着替える。

 暖房をつけていなかったのだ。

「うふふ…」

 しかし、そんな寒さよりもメイは袖を通している服に、ニコニコしてしまった。

 デパートに売ってあった安いジーンズとトレーナー。
 それと、やっとエプロンも手に入れたのだ。