帯からこぼれたお札を下に置いて、上から重石の意味で綺麗にたばねられているお札を積む。

 本当は、机の中とかの方がいいのだろうが、勝手に開けるワケにもいかないし、カイトだってどこにあるか分からないだろう。

 そうして、ノートパソコンの横に、札の山というレイアウトが出来上がるのだ。

 余りの不思議な構図に、それだけで一つ物語が出来てしまいそうだった。

 コンピュータと札束を抱えた野獣の姿が頭を掠めて、ふっとメイは笑ってしまった。

「う…」

 彼女の心の騒音にでも気づいたのだろうか。

 ベッドの方から、うめくような声が聞こえる。

 ドキン!

 慌てて、メイは振り返った。

 毛布の卵を蹴り割るように、カイトはそこから生まれた。

 面倒くさそうに身体を半分だけ起こしたのだ。

 頭を抱えるような手の動き。

 寝癖の頭。不機嫌そうな顔。

 そして。

 昨日のままの姿。

 トレーナーにジーンズだったのだ。

 男の人らしいというか――カイトは、その辺に全然頓着をしないのである。

 もしかしたら、会社に着ていくワイシャツのまま眠ってしまうこともあるのかも。

 想像すると、少し怖いけれどもおかしくなった。

「おはようございます」

 勝手なことをしたと叱られそうで、お札を背中で隠すようにしながら朝の挨拶を、笑顔で呼びかけた。

 バッと驚いた動きで、カイトが頭を動かす。

 きっと、彼女がいるとは思っていなかったのだ。