結果。

 カイトは、敗れ去ったのである。

 自分の部屋の床にたたきつけた札束の数は、持って出た時とまったく同じである。

 ただ一枚、抜け落ちただけだった。

 たかが、一万で何を買うというのか。

 カイトにしてみれば、何の労力もせずにすぐ使い切れるだけの金額だ。
 彼には節制という言葉はない。

 なまじ、若くして大金を使える環境になったせいで、金銭感覚が壊れてしまっているのだ。

 そんな彼と、メイの感覚が一致するハズもなかった。

 ただ、救いは―― ハルコの持っている生活費から少し分けてもらう。

 その言葉だった。

 彼女にある程度のお金を渡しておけば、メイが困ることはないだろう。

 週末以外は、毎日来ているのだから。

 だが、意味もなくお金を渡せば、ハルコは疑うだろう。

 かといって、説明をしたくもなかった。

 彼女が、金の裏側を察しないことを願うしかなかったが。

 無理だ。

 絶対無理だと、最初からカイトは分かっていた。
 あのハルコが見過ごすハズがない。

 だから、最初からお金を握らせておきたかったのだ。

 そんな不幸が訪れないように。

 けれども、メイにあんな目で、しかも忌々しいことに、あのウソについて一生懸命語られた日には。

 突っぱねられなかったのである。

 あのウソが、まだ彼女の中でしっかりと生きている――架空のカイト像を作り上げた真犯人だ。

 けれども、今更それを「ウソだ!」と取り除けるハズもない。

 それじゃあ何で助けたのかと聞かれても、やっぱりどうしても答えられないからだ。

 いや、違う。

 いまは余計に答えられないのである。

 好きだ。

 ムカッッ!

 自分で覚えた感情に自分で苛立ったカイトは、衝動的に札束を蹴っ飛ばした。

 そして、もう二度とそれを見ないようにしながら、ベッドに飛び込んだのだった。