どうしよう、どうしよう、どうしよう…。

  ダンダンダンダン!

 え?

  ダンダンダンダン!

 メイは、顔を上げた。

  ダンダンダンダン!

 音の方を見る。

  ダンダンダン、バタン!


 カ――イトだった。


 あの床を震動させるほど強い足音で近付いてきて、たったいまドアをぶち開けたのは、カイトだったのである。

 肩が上下しているのは、急いでいたせいか。

 メイも、慌てて床から立ち上がる。

 何事かと驚きながら。

 ダンッ!

 極めつけの一撃を、カイトはテーブルの上に強く置く。

 ピン札だった。

 いままで、誰にも使われたことのないような、触ると切れてしまいそうなお札。

 それが、一分の狂いもなく正確に重なっていて、帯で止められている。

 帯?

 メイは、驚いて目を見張った。

 見れば、カイトはその帯留めを3つもそこに叩きつけていたのである。

 ま、待って!

 一瞬、メイの計算機は壊れた。
 とっさに、全部でいくらなのか計算できなかったのだ。

 しかし、カイトはそれを置くや、顰めっ面のまま同じ勢いで出て行こうとするではないか。

 これには、メイも更にビックリしてしまって。

「カイト!」

 悲鳴のように――彼を呼び止めた。

 名前で。

 いつもの『あの…』では、止まってくれないような気がしたのだ。

 もう、神経すり減らしてまで、その名前で叫んだ。

 ビクッッ。

 カイトの身体が震えて、そして、止まった。