え?

 メイは、ぱたぱたと瞬きをした。

 彼が、何を主張しようとしたのか分からなかったのである。

 それじゃあ、口に運ぶ時に一呼吸置いていたのは、おいしくないのを覚悟しているワケじゃなくて――がつがつご飯を食べていたのは、一瞬でも早くこういうおいしくないものを食べ終わりたかったからじゃなくって、おかわりしたのは、メイに気を使ったワケじゃなくって。

 頭の中のこれまでの論理が、ガラガラと崩れていく。

 こんなにも、カイトとは言葉が通じないとは思ってもみなかったのだ。

 彼の無言の行動を、まだ全然理解出来ていなかったのである。

 カイトの言葉通りに意識を軌道修正することが出来ずに、彼女は動きを止めたまま。

「うめーっつってんだよ!」

 彼に。

 そう怒鳴られたら、一瞬で歯車が噛み合って回り始めた。

 カイトを見る。

 彼はまた、ガツガツと肉じゃがを食べ始めていた。

「あ…りがとうございます」

 怖い誤解は解けたというのに。

 彼に無理をさせているんじゃないと分かったというのに。

 メイは、胸がきゅうっとなってしまって――危なく泣いてしまいそうだった。


 ぐっと、こらえる。