毎日毎日、自分の知らないことが用意されていた。

 メイと暮らし始めて、一度だって同じ一日はない。

 ありきたりなものなど、何もなかった。

 どれもこれも、本当にカイトが知らないものばかりだ。

 彼女は、まるでビックリ箱のように、彼の目の前に次々と新しい表情や行動を見せてくれるのである。

 一緒の部屋で寝たことや、朝起こされたことや。食事も何度か一緒に取った。

 あぁ。

 カイトは、その食事のことでイヤな記憶を甦らせてしまう。

 こういう格好で、食事をした時のことだ。テーブルに乗っていたのはビーフシチューだった。

 彼は、自分のシャツを汚してしまったのである。

 今日の夕食は、肉じゃがらしい。

 カイトが食べたことのあるものと同じものなら、

 それも十分シャツを汚すことが出来るだろう。
 食事の作法に、気を使う性格でないだけ余計に。

 そんなことになろうものなら、また彼女はシミ抜きをする。

 多分――いや、絶対。

 着替えてから、食事とやらに参加しようと思った。

 また彼女と、一悶着を起こしたくなかったのだ。

 カイトは、一度部屋の中に帰ろうとした。

 別にそれ以外の他意のある行動ではなかったが、言葉が足りなかったのも事実だ。

 だから――事件が、起きた。

 ……!!!

 彼は、腕が何かに引っかかったのに気づいた。

 慌てたような強い動きのものに、捕まえられてしまったのである。

 それが何なのか、一瞬分からなかった。

 振り返る。

 すぐ側にメイがいた。

 一生懸命に訴える、見上げてくる目。