「あ、別に今でなくても…私、許可取ってきますから」

 大体。

 自分のことを、ハルコに言ってもらおうと思っていたのがムシが良かったのだ。

 こういうことは、ちゃんと自分の口でお願いしないと。

 メイは、彼女の行動を止めた。

「…構わないのに」

 彼女は苦笑した。

 しかし、怖いことを付け足す。

「けど…そういうお願いは、あなたがしない方がいいかもしれないわよ」

 どうなっても責任は持てないもの。

 苦笑しながらも、でも、少しそうなったら面白いとでも思っているのか、ハルコの目が悪戯っぽく輝いた。

「え?」

 彼女が何を言わんとしているのかは、メイには理解出来ない。

「でも…こういうことは、ちゃんと自分でお願いしないと」

 いつでもハルコがいてくれるワケではないのだ。
 このまま、彼女におんぶだっこではいけないのである。

「そう? それなら頑張ってらっしゃい」

 にこっ。

 ハルコの微笑みは、元気になれるような気がする。

「はい」

 その元気をもらって、メイはぺこっと頭を下げた。

「それじゃあ、夕食にもついでに呼んであげたら? 私はもう帰るから」

 でないと、出て来てくれそうにもないわね。

 天井の上の方を見上げる。

 真上はカイトの部屋というワケではないのだが、暗に彼のことを指しているのは、はっきり分かる。

「はい、いろいろありがとうございます」

 メイは、上着を羽織って出ていくハルコを見送りに玄関まで行った後、階段を上り始めたのだった。