「ダメよ…もう分かったでしょう? 彼には、…いいえ、シュウも含めると彼らには、女心を感知して気を回すセンサーなんて、全くないのよ。2人の自主性に任せておいたら…あなたが大変なことになるわ」

 それがもう少しあれば、男2人で同居なんてこともなかったでしょうに。

 ハルコのため息は、本当にしみじみとしたものだった。

 彼女ほどよく知っているワケではないので、メイにはコメント出来なかった。

 ただ、言っている意味は分かるような気がする。

 これから何かを必要とする度に、カイトの手を煩わせる必要があるのは問題だった。

 たとえ無駄遣いをしないとしても、生活には最低限の必需品というものが存在するのだ。

 当座のところは、ハルコが用意してくれたけれども、消耗品はいつかはなくなる。

 その度に、ハルコが来るまで待って相談とか、彼に直接お願いに行くとか―― 非常に困る。

「とりあえずは、あなたにカードを預けておけるように言っておくわね」

 しかし、ハルコの言った言葉は、彼女をビックリさせるものだった。

「こ、困ります! カードなんて!」

 大声になってしまって、慌てて自分の口をふさぐ。

 カードなんて使ったことがなかった。
 使ったことのない人間には、カードというものは未知の領域なのだ。

 ただ彼女には、食事のための買い物と、本当に些細な必需品を買う現金があればそれで事足りるのである。

 カードを預かるなんて責任重大なことが、出来るハズもなかった。

「あら…いやなの? カイトみたいなことを言うのね」

 聞けば、彼もカードは持たない主義らしい。

 その分現金を持ち歩く趣味があるそうで。

 ただ、家政婦のハルコにだけは、請求されるたびにいちいち現金を渡すワケにもいかないので、しょうがなくカードを一枚作っているらしい。

 ひとしきり、そういうことを話した後。

「分かったわ…それじゃあ、私が預かっている現金を少し預けておくわ。正式には、ちゃんと彼に伝えておくから」

 彼女は置いていたバッグの中をさぐる。