ガレージにバイクを突っ込む。

 見れば、ハルコの車がある。

 まだいやがるのだ。

 カイトは、忌々しさに顔を思い切り歪めた。
 気をつけなければ、すぐにツマミにされかねない。

 大体、何でこんな時間までいやがんだ!

 ハルコが、仕事終わりを待っている必要はない。

 とっとと帰って、あのとぼけコンサルタントの世話でもしていればいいのだ。

 そのまま家の方に戻りかけて――しかし、またカイトはガレージに戻った。

 仏頂面のままで。

 ヘルメットを外していないことに気づいたのだ。

 朝並みに、指がうまく動かない。

 その上、朝とは明るさが全然違うのだ。

 首の下での出来事ではあるが、視界が暗いと余計にうまくいかないような気がした。

 ようやく外して、ハンドルにひっかける。

 家に向かいかけ。

 やっぱり、戻った。

 舌打ちひとつ。

 カイトは、ジャンパーを脱ぎ捨てると、そこらに叩きつけたのだった。

「あっ!」

 玄関を開けるなり、メイが振り返った。
 驚いた声とともに。

 いきなりの妙な角度に、カイトは面食らった。

 いろいろ頭の中にあったことが、一瞬にして吹っ飛んでゼロになる。

「何…してやがる?」

 彼は、眉を顰める。

 どうにも、不自然な体勢だったのだ。

 いや、玄関に背中を向けているなんて状態は、玄関から入ってきた時くらいだ。
 しかし、玄関から入ったのはカイトであって、彼女ではない。

 こんなに間近で背中を向けているのは、どういう経緯があったのか。

 メイは、慌てて彼の方を向き直るとうつむいて。

「あ…いえ、別に…車の音みたいなのがしたんで、帰って来られたのかと…でも、全然ドアが開かないので…その…気のせいかと…」

 言いにくそうに、つっかえつっかえ。

 しかし、カイトには分かった。