「おめーは…」

 質問はありますか、というシュウの問いに、カイトはイヤミの口を開けた。

 その補足事項とやらが結構なもので。

 途中で、立っているのもバカらしくなったカイトが、自分の椅子に身体を投げ出してしまうほど。

 それが終わった後の出来事だった。

「大体、おめーは仕事以外の話ができねーのか?」

 仕事の件でやりこめられてしまったカイトは、このままでは腹の虫がおさまらなかった。

 だから、そんなことを言い出したのだ。

「は?」

 質問が来ると思っていたのだろうが、どうも話の雲行きが違うことに気づいたらしい。

 シュウは、書類を整えながら怪訝な声を出した。

「何を見る時でも、おめーの基準は仕事だろうが…それ以外のことは言えねーのかって言ってんだ!」

 反論してみやがれ。

 カイトは、何とか彼相手に溜飲を下げたいと思ったのだ。

 すると、シュウはきまじめな表情になった。

 眼鏡の向こうの目が、光の加減で一瞬見えなくなる。
 そうすると、ただのノッポの眼鏡人間のように見えた。

 背広を着るよりも、研究所が似合いそうな白衣でも着てろ、と言いたくなるみてくれ。

「仕事以外の話、ですか…それなら一つだけ」

 しかし、カイトの計算違いが起きた。

 仕事中なのだ。

 仕事以外の話には興味を示さずに、「時間の無駄です」などと言って出ていくと思っていた。

 それで、「ほれみろ、やっぱり仕事ロボットじゃねーか」と言えると思っていたのに。

 面食らっているカイトなど置き去りに、話を始めたのである。

「昨夜、あなたの部屋を追い出されたソウマが、しばらく私の部屋で話し込んで行きました…その時…」


「出てって、とっとと仕事しろ!」


 間髪入れずに、カイトは怒鳴った。