バ、バイクって寒くないのかな?

 冷暖房も完備していない、むき出しの乗り物。

 それに乗ったことはないけれども、いつも通るバイクを見るたびに、夏だと暑そうに、冬だと寒そうに感じていたのだ。

 カイトは、平気なのだろうか。

 いや、平気じゃないなら、自分で判断していろいろ着込んでいくだろう。
 そんなことは、彼にとっては心配のいらないことなのかもしれない。

 でも!

 今日は、彼の貴重な時間をつぶしてしまったのだ。
 朝食に付き合わせたために。

 そのせいで、急いであの格好で出かけたのなら。

「メイ?」

 頭の中でシミュレーションが走っていることを知らないハルコが、怪訝に呼びかけてきた。

 これは、彼女に聞くと分かるのかもしれない。

 カイトとは前からのつきあいのようだから、彼のバイク・スタイルを知っているかもしれないのだ。

「あ…もしですよ…もし仮に、この時期にバイクに乗るのに…その、背広だけだったら…寒いです?」

 極力当たり障りなく聞いたつもりだったが、余りにそれは綻び過ぎていた。

 しかも、言う相手がハルコなのである。

 何が、『もし』なのか。

 ハルコは一瞬大きく目を開けた。

 その直後――耐えられないかのように、口元を押さえながら顔をそらした。

 どう見ても。

 笑いをこらえるので必死のようだった。