そんなにたくさんのものに執着はないが、絶対手に入れると思ったら、彼は本当にすごいエネルギーをつぎ込む。

 いままでとは同一人物とは思いがたいパワーすら感じるのだ。

 しかし、どうしたことか。

 カイトのパワーは彼女に確かに向かっている。

 それは分かるのだ。

 しかし、押し流してはいない。
 力の流れは、彼女のすぐ側まで押し寄せてはいるけれども、接触はしていないのだ。

 ……?

 それが、シュウには理解しがたかった。

 ソウマの言うように、好意を持っているというのならば、理解しがたいカイトの熱い感情というものが、彼女を襲っていてもおかしくはないのである。

 どうやらカイトが、攻めあぐねているのは分かった。

 手をこまねいているとか、二の足を踏んでいるとか、表現はいろいろあるけれども、とにかくそういうものである。

 シュウは、立ちあがっている彼女をじーっと見た。

 前から分析しようとしてはいたのだが、すぐにカイトに邪魔されるし、今朝の廊下での場合は逃げられてしまった。

 攻めあぐねる要素というのを、見いだそうとしたのだ。

 でなければ、このまま仕事に差し障り続けるのである。

 円滑な仕事のサイクルを取り戻すためには、彼女がいなくなるか、カイトが手に入れるかいずれかの方法しかないと、シュウは踏んだのだ。

 いわゆる、カイトの敵だと思えば、シュウにだって分析しようがあった。

 仕事上の敵を陥落させるには、いろんな方法がある。

 カイトは、いつも駆け引きナシの直接攻撃系で力を見せつけたりするが、シュウのやりかたはそうではない。

 もっと外堀から埋めて――

「すんな!」

 しかし、カイトの大声で思考が中断された。

 調理場に向かおうとしている彼女を、怒鳴り声で止めたのだ。