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 ボーゼン。

 メイは、ワケが分からないまま、その部屋まで連れて来られた。

 ずっと空調をつけっぱなしにしていたのか、ひどく暖かい部屋である。

 それだけではなかった。

 すごく広い部屋――いや、すごく広い家なのだ、ここは。

 タクシーが、郊外の一軒家の門の前で止まった時、正直びっくりした。

 いくら郊外とは言え、こんな洋館があることは知らなかったのだ。

 カイトと名乗った男が、リモコンみたいなのを操作する度に、門が開いたり玄関までの明かりが灯ったり。

 何が何だか分からない彼女には、まるで魔法のように見えた。

 彼からの説明は全然なく、とにかく部屋の中まで連れてこられる。

 キョロキョロ。

 メイは落ちつかずに周囲を見回した。

 な、何をされちゃうの?

 メイの一番の不安は、そこだった。

 たとえ、カイトがお金持ちであっても、何の裏もなく彼女の借金を払うハズがない――そう考えたのである。

 当然の思考だった。

 大体、まだ借金が本当になくなったという事実を、メイは信じられないでいるのだ。

 父親が死んで、遺産の整理をしたら借金だらけで。

 ヤクザみたいな人たちが来て、連れていかれたのが、あのボスのところだった。

『大丈夫よ、あんたが借金を返せばいいの』

 うちで働きなさい。

 そう言われたのが数日前のことだった。