トンチキ野郎に向かって、カイトはテーブルをけっ飛ばした。

 つんのめるようにして、テーブルはソウマのヒザに激突する。

 彼ときたら、すっかりメイとの仲を誤解しているのだ。
 ハルコがどういう風に伝えたのか、まったくもって怪しい限りだった。

 女の口は、だから信用ならねー。

 忌々しく、記憶の中の笑顔ハルコに向かって悪態をついた。

「少しは手加減しろ…まったく」

 テーブルの位置を戻しながら、ソウマはぶつけられたヒザを軽く押さえた。

 あのくらいの衝撃ではビクともしないだろうが。

「違うのか? お前が、女と同棲するのなんて初めてだろう…これはもう、あの彼女を手放したくなくて、暴走した挙げ句連れ込んだと思っていたんだがな」

 しかし、ヒザに意識を向けるよりも、カイトの心の中が気になるらしい。

 ソウマの続けた言葉は、唐突に彼を抉ってくるようなもので、思わず思考停止してしまった。

 その隙に、カイトの100倍は口の回る相手は、もっと言葉を続けるのだ。

「離したくない、まで来たら『結婚』っていう道に、短絡的にお前が走ってるだろうと推理したんだが…そうか、ハズレか」

 参ったな。

 ソウマは、苦笑した。

 自分の推理のハズレが残念でしょうがなかったようだ。

 カイトの気持ちなど、本当におかまいなしで話を進めていく男である。

 彼は――カイトは、ここでやっと我に返った。

 そうして、ソウマから顔をそらす。

 目を見せると、心の中が読まれそうだったのだ。

「んなんじゃねぇ…あいつとは、そんなんじゃねーんだ、バカ野郎!」

 口をへの字にひん曲げて、言葉の最後の辺りでは、またテーブルをけっ飛ばしそうになったが、何とか脚にこらえさせた。