あっ!

 メイは、かぁっと全身が赤くなるのを感じた。
 いま、彼を疑ったことが、物凄く恥ずかしいことに思えたのだ。

 カイトは、酔って眠っているだけだった。

 酔っている時は、いろんな判断能力が低下するもので。

 彼は、いつものクセでベッドに向かっただけなのだろう。
 そこにメイが寝ているということを忘れて。

 そうして、倒れ込むように眠ってしまったのだ。

 要するに、いまのカイトにとって彼女は、女ではなく敷布や枕と大差ない存在なのである。

 それだけなのに。

 私ったら。

 自分のことを、バカバカと繰り返すだけしかできなかった。

 カイトの意識がなくて、本当によかった。

 でなければ、身体の下で顔を押さえてジタバタしているメイを目撃されてしまうところだった。

 すかー。

 そんな彼女の心など知らないカイトは、気持ちよさそうに眠っている。
 身体と呼吸の下で、メイがいたたまれない思いをしているというのに。

 あれだけ心の中で騒々しい真似をしていても、彼には全然伝わっていない。
 起きる気配すらないのは、お酒で眠りが深い証拠。

 メイは、手探りをした。

 これからどういう状況に持って行こうにも、この暗さではどうしようもないのだ。

 いままで探したことはなかったけれども、一応ここはベッドである。
 だから、ベッドサイドの明かりくらいあるかもしれないと。

 それは、ビンゴだった。
 スイッチが手に当たって。

 パチン。

 薄白い明かりは、サーチライトだ。
 ごく狭い範囲を、円形に切り取って見えるようにしてくれる。

 あっ。

 メイは、ドキドキと胸を騒がせた。

 さっきまで暗くて意識していなかったけれども、カイトの無防備な寝顔が――本当に、すぐ側にあったのである。

 寝顔を見たのは、初めてだった。

 だから、きっとこんなにまで胸が騒いでしまうのだ。

 若い男女がこういう状態というのは、あまり聞こえがよくない。
 いま誰かに踏み込まれたら、きっと誤解されるに違いなかった。

 でもでも。

 メイは、離れがたかった。