また一晩、彼女と同じ部屋ということか。

 信じられねぇ。

 思い出すだけでグラグラしそうだった。

 昨日の夜、なかなか寝付けなかったことも、心の中でわだかまっていたものも。

 あんな眠った気のしない夜なんか、大嫌いだった。

 その夜が、また来るのだ。

 階段を上がったら。

 心配そうな顔がドアの前にあった。

 置いていかれた動物みたいな目で――っ!!

 んな目ぇ、すんなー!!

 ダンダンダン!!

 心の中で、足を強く踏み鳴らした。

 夜のことを考えると、限りなく自分が信用できないケダモノのように思えるのに、そんなバカヤロウを目の前に、何て顔をするのか。

 これがカイトではなく他の男だったなら、絶対どうかされるに違いない。

 絶対に、絶対!!!

 頭の中の決めつけは、冷えたガムのように彼にこびりついた。

 彼女に信用して欲しかった。

 だから、あんなガラにもない宣言をしたのだ。

 けれども、いまみたいな目は反則だった。

 知らない顔を持ち出して、いまのカイトに向けるなんて――チクショウッ。

 無言で顔をそらしながら、カイトは彼女の脇をすりぬけて自室に戻った。
 忌々しいベッドを見ないようにしながら、ソファにガンとふんぞり返る。

 パタン、とメイも部屋に戻ってドアを閉めた。

 けれども、彼女はそのドアの側から動こうとはしなかった。

 じーっと突っ立っている。
 どこにいたらいいのか分からないようだ。

 う。

 カイトは、更に困る。

 この部屋の、どこに彼女を置いておけばいいか分からなかった。

 向かいのソファが空いているけれども、その席を勧めるのは、ある意味自爆を誘うようなものである。

 そんな至近距離で、彼女を見るなんて。