すごく…好き。

 怒鳴られてばっかりでも、その声は怖いけれども、でも、好きだという気持ちが止まらない。

 まだ、もっと泣いていられるハズのメイの腕が引っ張られる。

 上に向かって。

 そして。

 ぐいぐいと引っ張られた。

 最初もそうだったように、泣いているメイを強い力で歩かせるのだ。

 来た道をもどる背中。

 シュウと呼ばれた男の縦長の背中じゃない。
 興奮しているせいか、肩をいからせている背中。

 泣いて。

 泣いて食事など出来る状態じゃないというのに、彼女を無理矢理ダイニングに引きずり戻したのだ。

 手もつけられずに用意されたままの食事と、温かい部屋。

 無理矢理椅子に座らされる。

 ガタン。

 向かい側に彼が座った。

「オレは、おめーが食い終わるまで、ぜってーここを離れねーからな!」

 一言一言を突きつけて噛み砕かせるように、カイトは語気を強くして言った。

 フォークもスプーンも持たないまま、メイは顔を上げられなかった。

 どうして上げられようか。

 目の前には、男がいるのだ。

 それは、自分が恋焦がれた―― けれども恋焦がれるワケにはいかない相手だった。