近くにあったタオルケットを毛布代わりにして僕はそっと目を瞑った。
排出行為が終わったらしく、水の流れる音がここまで届いた。
足跡は居間に向かうことなく、キッチンへと向かっていた。
たとえ視覚を失ったとしても聴覚だけでこれくらいは、簡単に分かった。
次に冷蔵庫を開け、ペットボトルを取りだし、飲む。
その後、そのペットボトルを冷蔵庫にしまって、居間に向かう。
毎朝決まったパターンでここまで辿り着くのは父しかいない。
「お?亮太起きてたのか?」
そう言いながら、父親は机に置いていた眼鏡をかけた。
「……バレた?」
「そんなくだらんことをしないで、学校の準備しろ」
「分かってるよ」
このやり取りもパターン化されていた。
僕は、この決まりきった何も変わらない毎日にも飽き飽きしていた。
変えようと思えば、変えられる。
だから、僕は家出する。
様々な理由、経緯、色んなものが溜まりに溜まったから家出に至るのだ。
僕はトイレに入って鍵をかけた。