まずい。


もう起きたのかな。


ちらっと時計を見てみると、もうすぐ七時になろうとしていた。


何でだ!?


起きた時は6時だったのにどうしてもうこんなに……


そうだ。


寝ぼけていたから、きっと目が覚めてからぼうっとしていたのだろう。


それに随分と長い間、必死になってお年玉を探していたからかな。


くそっ!


こんなことなら、最初から親の財布から抜き取れば良かった。


時間経過の原因について推測している場合ではない。


どうしようか。


三万円で手を打とうか。


こんなところで、親に犯行現場を取り押さえられてはもともこうもない。


諦めよう。


二階から降りてくる足跡は、一階で立ち止まりトイレへと入った。


ドアを開ける音はしたが閉める音はしなかった。


おまけに便器を下ろす音がした。


間違いない、父親だ!


これは願ってもないチャンスだ。


父親の朝のトイレの時間はどんなに長いことか。


世間の誰もが思っていることだろう。


おそらく制限時間は五分。


これだけあれば十分だ。


トイレから、不快な排出音が聞こえる。


その音に紛れて、そっと財布を手に取った。


中身には十万円が入っていた。


全部取ると怪しまれる。


さっき三万円抜き取ったから、七万円抜き取ろう。


これで十万円だ。


これだけあれば、一ヶ月以上は何とかイケるな。


軽くガッツポーズをとって、父親の財布を元に戻した。


その後、トイレットペーパーを巻き取る音がした。


ふん……余裕だな


僕はゆったりとした体勢をとり、居間のソファに横になった。