「おはよう!亮ちゃん!」
ドキっとした。
「お~!おはよう、ゆうぴー!」
そう言えば、毎朝二人で学校に行っていたんだった。
彼は祐也。
一時期『ぴー』をつけるのが僕のクラスで流行っていたためそうなったのだろう。
僕も『りょうぴー』と呼ばれていたが、いつのまにかそう呼ばれなくなった。
ただ、彼だけは今もなお『ゆうぴー』なのであった。
そもそも『ぴー』が、一体どこから涌いてきたのかは誰も知らない。
「亮ちゃんさ!勝手に一人で行きよったよね?なんでよ!」
「いや…ちょっと寄るところがあったからさ!ごめんね?」
「どこ?」
「え?」
「だから寄るとこってどこ!」
「え?いやぁ…秘密?」
「なんだよっ!教えてよ~!教えて!」
「だ、だから秘密だって~!」
「なにそれ~!?俺ら友だちじゃないのかよ!?」
「いや…それとこれとは話が別…」
「…はぁ…そうくるか。それならそれで別に構わんよ?行きたきゃ行けば?どうなっても知らんよ?」
「そう?んじゃ僕は行くからっ!じゃね!」
「あっ!亮ちゃんめ…もう知らね!」
ごめんね、ゆうぴー。
こればっかしは言えないよ。
だって、家出するって言ったら絶対止めるだろうしさ。
それに、嘘ついてもきっとバレたはず。
そうなったら、もう家出できなくなっていたはずだ。
秘密としか言えないよ。
僕の横を通り過ぎる電車は、真っ黒に埋まっていた。