夜のシンとした空気の中で、貴方はいつもの言葉を、いつもの様に、いつもの笑顔で言った。


「じゃ、またな。」


何度も繰り返した、いつもの光景。


私の返事だけが、いつもとは違っていた。


「もう、会わないよ。」

「え…なんで?」


驚いた顔するんだね。一匹ぐらい、逃げても平気でしょう?


「羽化するの。」

「は?」


もっと驚いた顔。何だか少し、可笑しくて笑ってしまう。


「う、か。」

「何言ってんの?」

「私はね、青虫だったの。あんたに沢山餌を貰って、蛹になったの。でも、身動き取れなくなった…」

「意味わかんね…」

「あんたはキャベツね!」


ビシッと指差して言ってやる。