後半はどうでも良い話をしながら時間が過ぎるのを待ったけれど、日付が変わっても体が元に戻る気配は全くなく。

流石にそれ以上は、待っていられなかった。

「……仕方ない…帰ろう」

このまま時間に任せても何にも解決しない。
わかったのはそれだけだった。

あたしの結論に隣りに居た彼は驚いたように顔を上げ、あたしに視線を向けた。
怯える小動物のようだなと思った。

「か、帰るって…っ どこに…?!」
「どこにって、家に決まってるでしょう」

「この状態で?!」

本当、必要時以外のところでは大声が出せるひとだなと思いながら、立ち上がり背を伸ばす。
コキコキと小さく骨が鳴った。

「しょうがないでしょう。このまま待っても解決するとは思えないし、明日も学校だし」
「で、でも…!」

「あなただってはやく帰らないと終電なくなるわよ」
「い、いざとなったらタクシーで帰るから、ぼくはいいんだけど…」

顔はあたしでもその金持ちの坊ちゃん発言にイラリとした。
お互いの持ち物は交換済みだったけど、あたしのお財布のままだったら確実に彼は家に帰れなかっただろう。

「一晩寝てそれでも元に戻ってなかったらその時に考える。しつこいようだけど、戻らなくても学校には必ず来てよね。まぁその時は念の為迎えに行くけど」
「待って昼間にぼくのまま外出歩かないでお願い…!」

「じゃあよろしくね」
「順応性高すぎだよ月子ちゃん…!」

またもや半べそをかきだした彼に若干呆れつつ、それでもそれ以上構う気はなかった

カバンを持ってくるりと背を向ける。

「まぁ、目が覚めたら夢でした的なオチで終わることを祈るしかないわね。それじゃあ」
「ま、待って……!」

階段を一段下りたところで彼が叫んだ。
暗い校舎に木霊するのはあたしの声。

「ぼくも行く…!!」