「これが……千住くんのケータイ番号とメルアド――」


「か・な・で、だろ?」


「あっ!」



とっさに「千住くん」といった瞬間、メガネの奥の目がきらっと光ったように感じた。



「か……奏」


「そうそう」



3度目のなでなで。



(これ、クセになるかも)



温かな手のひらの感触を楽しんでいると、



「さて。交換も済んだことだし」



奏がメガネを指で直した。



「ん……?」


「円」



呼びながら、彼が歩き出す。



数歩おくれて、私もタタタッとあとに続く。



横に追いついたとき、彼は前を向いたまま、「今日もいい天気だね」という雑談をするのと同じトーンでいった。