私がようやく声を出すと、
「当たり」
耳に息がかかって――ぞくっ。
「えらいえらい」
頭をくしゃくしゃっとして、千住くんは身体をほどいた。
「…………っ」
ほめられて、今度は背中がむずがゆくなった。
すごく嬉しかったからだろうか、今日は視線をきちんと合わせられた。
「ただし」
彼は、私を見下ろしながらいった。
「『千住くん』なんてナシ」
「えっ……?」
「彼氏なんだから、『奏』って呼べ」
「よ、呼び捨て?」
見あげながらたずねると、彼は「恋人だからな」とうなずいた。
「当たり前だ」
「う……う、うん」