登校を拒否しているわけじゃないから、こないわけがないんだけど、私の心の声は予想外とでもいいたげなセリフをこぼした。



彼は、中央のいちばん後ろの席に座って、あくびをしながら手を軽くグーにして口をふさぐ。



そんな何気ない仕草に反応して、



「わぁっ……かっこいい」


「画になるよね、何やっても奏クンって」


「写メ撮っとけばよかったぁ」



廊下から、よそのクラスの女子たちが彼をながめてうっとり。



ピンク色のハートがそこかしこに浮かんでるような、ふにゃっとした空気が教室に流れこんできた。



「たしかに画になるけど、ちょい現実離れしてるよね、千住奏って」



ミッチが、そういって肩をすくめた。



「……う、うん」



彼女のいう通り、あの周辺だけ、なんだか別世界みたいだった。



極端にいえば、テレビ画面を通して見てる感じ。



私がずっと頭に描いてる、恋愛の相手の理想像そのものといっても過言じゃない。



やがて視線に気づいたのか、千住くんがちらっとこっちを向いた。