私の前髪をあげた奏は、いきなり自分のおでこをくっつけてきた。
「奏クン……!!」
那須さんが、悲鳴にすごくよく似た声をあげた。
教室中も、大きくどよめく。
「オマエ熱あんじゃん」
そんなみんなの注目も意に介さずに、彼がいった。
「ね……熱……?」
「あ~。きのうのデートで濡れたからか。それにしても、濡れて風邪って。相当単純なやつだな」
彼の「デート発言」に、一段とどよめき。
あちこちで「デートだって」とか「まさか百合岡さんと?」とか、全部は到底聞きとれないほど、会話が飛び交った。
「デ、デートって……奏クン、この子とどういう……?」
那須さんが声をかけると、彼は「あ?」と彼女のほうを向いた。