ゆっくりと目を閉じると、廊下から誰かが走ってくる足音が聞こえた。

………誰?

その足音はちょうど自分のクラスの前で止まると、ガラッとドアを開いた。

「………由香?」


……………え?


ばっと顔をあげるとそこには部活の格好をした翔太が立っていて。

「……なんでいるの?」


私を驚いた表情で見つめた。

「……翔太は?」

私が聞き返すと、翔太は自分のロッカーからスポーツタオルを出して「忘れ物」とひらひらさせながら言う。


そこにいつもの甘い笑顔はない。