「そしたら、その天使はその人間のために特別に羽を与えちゃうでしょ?」


なるほど、確かにあり得る話かもしれない。尤も、アンジェロのように平等な天使でなければの話だが。




「だからそうできないように、そうなってしまった天使も神様は堕天に変えてしまうんだよ」

俯いて、静かに、少年は言った。

サーシャとアンジェロは恋に落ちていただろうか。

そうなのかもしれない。けれど、アンジェロが堕天使になったのはそれが原因ではないはず…




「もちろん、アンジェロはそれが理由で堕天になったんじゃないけどね」


サーシャを安心させるように少年は明るい声でニコリと笑った。

どちらにしろ、アンジェロが堕天になる運命に身を置いていなくとも、自分とは天使として結ばれることはなかったのだと。

改めてサーシャはアンジェロを遠くに感じた。



人間と天使。


―――そもそも、住む世界が違うのだ




「でもやっぱり、あなたも私の考えていることが読めるみたいだね」


さっき彼女の内心を汲み取った少年の様子からそう確信してサーシャが口を開いた。