「で、どうするか話そう。

お姉ちゃんがした願い事について」


少年は真剣な眼差しに変わり、サーシャの横に腰掛ける。

その仕草がいつだかのアンジェロの姿と重なって、サーシャの胸は締め付けられた。




「私、わからないの。

アンジェロが本当のところ何を望んでたのかなんて。

だって彼は私にあまりにもたくさんのことを隠してたし、私はちゃんと彼の心をわかってあげられていたかどうか自信がないの」



アンジェロと過ごした1ヶ月、それはあまりにも短すぎた。




「だから今だって、わかんない。私がした願い事を、本当にアンジェロが喜んでくれるのかどうかなんて…」


途方にくれて呟くサーシャの横顔を、少年はじっと眺めていた。




「ほんとだったらさ、人間と天使は深く繋がっちゃいけないらしいんだ。なんでかわかる?」


意味ありげに向けられた少年の視線にサーシャは首を傾げる。




「どうしてなの?」

「人間は欲深くて自己中心的な生き物だって神様は思い込んでるの。

だから人間が羽を手にしたら自分自身を救うためだけに使うはずだ、って。

でももし天使と人間が深く関わって…」

「関わって?」


そこで一旦声を落とし、言葉を切る少年にサーシャがたたみかける。




「関わって、恋になんか落ちたら、」


どうしたのだろうか。それまでは楽天的な印象を与えていたのに、今は少し悲しそうな表情をみせる少年。