―――全て終わってしまったんだから
アンジェロの脳内でバスチアンの言葉がループする。
終わってしまったんだ。
天使にだって命を再生することはできないのだから。
「きっと、誰が悪いとかじゃないよ。兄ちゃんは弱かったんだ。自分の間違いで君を失うことに耐えられなかったんだよ…」
『リュカは、弱くなんかなかったよ…必死で…精一杯に君を守ってた。
僕なんかよりよっぽど天使みたいだったよ』
アンジェロは久しぶりに苦笑を漏らした。
あああ、なんであんな素晴らしい友達が今、隣に居ないんだろう。
「でも、自分で命を絶つなんて…。最も罪深い大罪だよ。神様が一番嫌うことだもん」
『じゃあ、リュカは君よりもよっぽど堕天使みたいだね』
ふふ、と2人でシニカルな笑みを交わす。
不思議と可笑しな気分だった。
まだ受け止めたくない現実と、自分たちを取り残して過ぎていく時の狭間でプカプカと浮いているよう。
「アンジェロ」
『バスチアン』
―――――。
情けなく笑い合った次の瞬間にはもう、お互いの視線を交わした途端に
何かを感じて表情を固めた。
「………」
『………』
もう誰も、笑ってはいなかった。
暫しの間見つめ合い、そのあと無言のままひしと抱き合った。
お互いに相手を押し潰してしまいそうなくらい、強く。