「―――アンジェロ」


久しぶりに発する声は、思いの外掠れてしまっていた。

アンジェロはびくりと体を震わせて、バスチアンの方へ顔をむける。




「…このままじゃ僕たち、ダメだよ。」


確かにその通りだ。ろくに食べる気力もないでいたせいで、2人の衰弱は相当激しかった。

もう、限界だった。




「…僕が言ったこと、覚えてる?」

『………』

「誰よりも強くなるって言った。そうでしょ」


あぁ、そんなこともあった。

こくりと肯くアンジェロはあの日のことを、もう何十年も前のことのように感じていた。




「このままだと僕、兄ちゃんを裏切ることになっちゃう。

兄ちゃんはきっと、アンジェロがもう死んだんだと思って…だから…」


自分で命を絶ったんだ。


「だから、アンジェロは生きなきゃいけないと思うの。兄ちゃんの分も…」

『でも――――――』


アンジェロが言葉を発した。

深刻な面持ちで吐き出されたそれは、爆発寸前の危うさを含んでいて




『でも、でもリュカは僕があんな力を与えたから。そのせいで死んだんだ。僕はあのときリュカを守ったつもりでいて…でも全然そんなんじゃなかった。僕は、リュカがあんなふうにするなんて―――全然わかってなくて』



(…ただの自己満足だったんだ、僕のしたことは。リュカを追い詰めただけだった)



『リュカが消えてほしいって言ったんだ。

だから僕が消えてしまえばそれでいいと思って………僕はきっと、逃げ出したかっただけなんだ。全部終わりにしたくて―――――僕のせいで――――僕がリュカを殺したんだ――――「アンジェロ!」


溜まりに溜まったアンジェロの心の戸惑いは一気に溢れ、支離滅裂な言葉の羅列となって表にでた。

それをせき止めるようにバスチアンが叫ぶ。




「そうやって自分を責めるのはやめて!もう終わったんだ、もう…………。全て終わってしまったんだから」