―――ガタン
重厚なドアを押し上げれば、がらんどうで真っ白な、誰もいない静謐な空間が広がった。
思いつく限りで最も神聖な場所―――教会。
リュカが茫然として回らない頭を抱え、あてもなく歩みを進めていると、気づけば此処にたどり着いた。
「…教、会」
一番奥、自分の居る場所からそこへは真っ直ぐに葡萄色のカーペットが引かれ、ろうそくがいっぱいに灯されている。
左右をみやれば、アンジェロによく似た天使の絵があって胸が締め付けられた。
(…天使は俺を見ようともしない)
前、右、左、どの天使も目を伏せて穏やかな表情を浮かべている。
己の先走った勘違いで友達をあんな目に合わせてしまった汚い人間のことなど、きっと見たくもないのだ。
「…ごめ、なさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
何かに縋りたい一心で、許されたい一心で、アンジェロを取り戻したい一心で
何かに取り憑かれでもしたかのように、そのまま奥まで歩いていくリュカ。