そもそもアデライードが軍に入隊したのは、単に安定した収入が得られるから、というだけのことだった。

 愛国心とか、ヒーロー願望などというものは、彼女には更々ない。

 身体能力が低いわけではなく、入隊試験はすんなり合格。

罰則を受けないためにそこそこ程度に訓練をこなしていただけなのだが、人並み以上に手際が良かったため模範生として表彰されてしまったのは迷惑な誤算だった。

(面倒なこと、してくれちゃって…)

 アデライードの性格上、注目を浴びることは迷惑以外の何物でもない。

 無用の懲罰を受けるのは勿論面倒だが、かといって人に取り囲まれるのも鬱陶しいこと極まりない。

 最低限の人間関係を確保できればそれでよかったのに、やたらと余計な荷物を背負いこんでしまったものだ。