ミニバンに近付くと、明日見が中年女性から、代金を受け取るところだった。


「今度はポットを持って来るわね。」

「お待ちしてます。ありがとうございました。」

あの笑顔で対応していた。


「明日見」と言うのも

「羽田さん」と言うのも恥ずかしい気がして、ただ近付いた。


明日見はすぐにオレに気付き

「光ちゃん!」

と胸に飛び込んで来た。

オレは顔が赤くなるのを感じながら、少し明日見を胸から離した。

「繁盛してるのか?」

「まぁね。」とオレに向かって、ちょっと下手なウィンクをした。また、それが愛しく思えた。


「なんで、海に来なかったの?」

明日見は唇を尖らせた。
「イヤ、雨だったから…」

「私、毎日海に行ったんだよ!?海が好きなら、毎日見なきゃダメじゃん。」


明日見は本気で怒っているようだった。

「ゴメン。」


オレは本来、素直に謝るタイプの人間ではない。
だが明日見に、とても悪い事をしたような気がして、心から謝った。


「よし。許してあげよう。」

明日見は、両手でオレの顔を挟んだ。


そこで急に、情けない表情になり

「お腹空いたなぁ。」

と呟いた。

オレは大笑いし

「一緒に食うか?」

「うん!」

とまた、オレをギュッと抱き締めた。