ガラガラー

「失礼します」

あたしは、恐る恐る
声を出した


「え…、明花?」

すこし大人に見える益の
姿が目に入った

「益!益のバカ!」

あたしは、怒りがこみ上げ
爆発した


「明花、落ち着けって」

益は、あたしを
慌てて静かにさせようとする


「益が悪いんじゃん
あたしに何も言わないで
勝手に入院するからー」


涙でボロボロになった顔を
益の懐かしい腕が包んだ



「ま…す?」


あたしは、動揺した
懐かしい腕だけど
益の臭いじゃなかったから

あの頃の益は
いつも、汗と香水の
匂いがしていた

でも、今は
病院の薬の匂い


これが、いまの益なんだ
これが、現実なんだ