「離れろよ」
「やだ…っ」
あさきは泣いているのか、俺の胸の部分にシミができてきた。
しかも肩を上下に小刻みに揺らしている。
いくら、性格の悪い女だからって怒鳴ることは出来なかった。
でも静にあさきを俺から離そうとした時だった…
「…っ」
――――………
時が早く進めばいいと思った。
………実紅。
目の前には帰る支度をし終わった実紅が俺のカバンを持って、ドアのところに立っていた。
運が悪すぎる。
最悪だ。
勘違いしてるに違いない。
あさきを離して実紅を呼び止めようとした時だった…。
「やっぱり、まだその人のこと好きだったんだね…」
涙を流しながら、実紅は走り去ってしまった。
………。
なのに、役立たずの体は動いてはくれなかった。
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