舜はガサゴソと自分の鞄の中を何かを探すようにあさりだした。
そして見つけたのか、中から小さな箱を取り出した。
「ベタなのってあんまり好きじゃねぇんだけどさ」
あたしの視線は“その”小さな箱だけに集中していた。
だって天然で鈍感なあたしにも分かった。
今までの舜の話から、行動から、流れから、雰囲気から。
舜の真剣な表情から。
「………大学卒業したら」
壁に寄りかかるように座ってるあたしも、落ち着いてる舜の声を聞いて
しっかりと座り直した。
そして舜がゆっくりと口を開く。
「結婚してほしい」
小さな箱を丁寧に開けてその中から綺麗に輝く指輪を取り出した。
自意識過剰かもしれないけど
これがよくテレビドラマとかにも出てる“結婚指輪”というものだと見た瞬間分かった。
それと同時にこれも自意識過剰かもしれないけどプロポーズされてるんだと実感がわいてきた。
だからこそ恥ずかしくて真っ直ぐ舜のことを見れなくなる。
小さな箱を触れる手さえまとめに見れない。
これまで以上に恥ずかしくて
でもその恥ずかしさは恥じらいとかじゃなくて嬉しいという中の恥ずかしさだった。
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