「実紅って、嘘ついてる時、照れてる時、黙って心ん中で喋るんだよな」


「そんなこ…」


「あと、不安になってる時」



“そんなことない”と言おうとしたのに舜に呆気なく遮られてしまった。



そして意外と自分では気付かない癖があるのかもしれない。



あたしは、別に意識して計算して照れてる時に、嘘ついてる時に、不安になってる時に黙ってるわけじゃない。



無意識に体が動かなくなっちゃって、自分では何も出来なくなってしまう。



喋りたいけど

本音を言いそうで怖くて
でも黙ってると

泣いちゃいそうで



我慢嫌いなあたしの体は、言うことを聞かない我が儘な体。




「舜さー…」




いきなり口を開いた修夜は、視線を合わせようとしない舜を睨んでるようにも見えた。



何を言うんだろう。


修夜のことだから、あたしの本音を舜に言っちゃうんだろうか。



ドクンドクンと胸が静かに鳴っていた。




「不安にしたくねぇなら、俺に実紅ちん任せてよ」




風があまりにも強くて


前髪が邪魔をして修夜と舜の顔は見えなかったけど



舜が修夜の方に近付いて、何かを殴る鈍い音が聞こえたのは分かった。



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