聞いてあげたかったよ、本当は。
あんなに真剣に将来の事を考えてる舜の話を。
なんなら、力にならなかったかもしれないけど相談してほしかったんだよ。
少しでも舜の力になりたかった。
でも実際は、何も聞けずに何も力になれずに、何も相談にのれることが出来ずに
今日を迎えた。
何で自分だけがって、
何で自分だけが置いていかれてるなんて思ったりしたんだろう
舜は考えてたのに。
会社を継ぐこと
大学に行くこと
県外に引っ越すこと
「でも分からないよ」
大学に行くなら、あたしと一緒の近くの大学に行けばいいじゃん。
わざわざ県外に引っ越さなくてもいいじゃん。
「何で引っ越すの?何で、遠くに行くの?あたしと、一緒の大学じゃ駄目なの?」
電話越しの舜の声は、それから数分聞こえなくなり
数分たった後、愛しい声が聞こえた。
「そこの大学でしか学べないことがあって、それを学んでみたいと思った」
その答えは
あまりにも真剣で
落ち着いていて
低くて
透き通っていて
揺るぎがない声で
思わず頬を、涙が伝った。
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