実紅の肩をグイッと抱いて自分のほうに引き寄せた。
実紅は驚いた顔をしていたけど、一々表情を確認してられねぇ。
口より先に体が動くって、こういうことなのかと実感。
それでも、口は動く。
「別に守ってなんて頼んでいませんけど。…な、実紅」
実紅に問いかけると、急に話を振られたから戸惑っていた。
自然と目力で“早く答えろ”と伝えたみたいで
戸惑いながらも実紅は口を開いた。
「は、はい」
「ってことで、ボディーガードとかいらないんで」
それだけ言って早く帰りたくて、早足で此処を去ろうとした。
実紅はそのまま動こうとせず、俺の腕からスルリと抜け出て、山崎さんに話し掛けた。
なにやってんだよ。
早く寮に帰んねぇと、この怒りが収まんねぇんだよ。
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