「そんなん知らねーよ。つか、覚えてねーなら、覚えてないって言えばいいじゃん?」


「…覚えてるのっ!」


「だったら、ためらってねーで、早く言えば?」


「……っう」



ここまで意地っ張りだったけ、あたしって。



だってここまで意地張ってたら、今さら『覚えてません』なんか、言えるわけないし…。



「ほんとのこと、話せば?」



優しい口調の舜。


でもきっと舜には、裏がある。



いつも意地悪な口調なんだけど、たまに優しい口調になる時があるんだけど―…



その口調は、いつも何故か少し甘い気がする。



「ほんとのこと、言ってみ?」



ほらね。またあたしを、頭の思考回路を狂わすんだ。



真っ直ぐに見つめてくる、キレイな黒い瞳。


薄いピンク色で、女の子なら誰もがキスしてみたい唇。


痩せてるのに、所々筋肉がついてる、たくましい腕。



―…そして優しい口調。



いつも、あたしを惑わすのは目の前にいる狼。






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