全部話し終えたあたしは下を向いた。こおたは黙ったままで、ただあたしの手を握っている。

はじめて出会ったこおたにさえ、嫌われてしまうのだろうか。はじめて触れたぬくもりでさえ、なくしてしまうのだろうか。この手は、振り払われてしまうの?


「──ゆづき」

いきなり名前を呼ばれて、あたしは肩をビクつかせる。波の音が止んでいた。


「ひとりで、がんばってきたんだね。今まで、ずっと──」

こおたのちいさく震える声が、そこで途切れた。あたしは少しずつ横に視線をずらす。

「こお、た…?」

「っ…」



こおたは、泣いていた。


あたしは言葉を失う。



「ごめんね。ごめんね。ゆづきの方がつらいのに、ぼくも泣いちゃってごめんね。ごめんね」

こおたは、パーカーの裾で目をごしごしとこすりながらそう言った。


どうして?


どうして誰かの為に、ついさっきはじめて会ったばかりのあたしなんかの為に、こおたはこんなにも泣けるのかな。


「ぼく、男の子なのに、弱虫だね」

「そんなこと、ないよ!こおたは、強い子だよ。ゆづきとはね、ちがう…ゆづきは…ゆづきは…」


言えなかった言葉の代わりに、あたしはこおたの手をそっと離してゆっくりと立ち上がった。


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