「小暮さん榊原さん、遅刻よ」


音楽の先生が、ため息まじりに言う。
アゴの長い人で、いつもその姿に私たちは笑ってしまうけど、
この状況ではとても笑えなかった。



「す、すみません……」
「次は気を付けます」

私がみんなの視線から逃れるように謝っていると、
麻衣はそれらしいことをハッキリ言って、私の背中を軽くたたいた。


(ほら、席つこうよ)


小さな声と、口の動きで、そう言っているのが分かった。



(うん)


私は軽くうなずき、もう一度先生の方を向いて

「本当にすみませんでした」


と言って、自分の席へ小走りで向かった。



…杉本のせいだ。