確かに、仕事を途中でとられたという点では、ひっかからないわけではない。

 しかし、削除中にサヤが口を挟んだ時。

 彼は、何か起きそうな気配を感じていたのだ。

 壷の怒りについて語った時と同じように。

 おかげで、孝輔はE値を発見することが出来た。今回、一番の収穫だ。

 そしてE値を導入したてのプログラムで、はっきりとその動きを見ることが出来たのである。

 依頼人が、壷を抱えた時、だ。

 一気に下がっていくそれ。

 直樹の手が、たまたま近くにあったからこそ測定できた。

 E値をこれからどう活用していくのかは、まだ何も分からない。

 ただ。

 その道しるべを──サヤが持っているような気がした。

 霊の感情を、理解することが出来る彼らにとっては貴重な存在。

 算数と国語のどっちがすごいか、というのは未来永劫解かれる答えではないだろう。

 孝輔は算数の道を、彼女は国語の道を進んでいる。

 算数以外も使えば、よりよい答えが導き出せることもあると。

 今回、それを彼女は教えてくれた気がした。

 畑が違いすぎて、孝輔にはかなり難しい問題だったが。

 それに。

 ハンドルを握ったまま、彼の頭にいくつかこびりついたものがあることに気づいた。